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コラム西池
   
電力自由化の構図 2016/2

 2016年4月の電力小売の全面自由化を控え、新たな料金プランの発表が相次いでいる。
電気料金は今まで、主要電気事業者が地域ごとに占有しており、市場競争がなかった。
これからは、いわゆる発送電分離の方向で発電事業、送配電事業、小売電気事業に分かれ電力安定供給の要となる送配電事業は許可制、その他は登録制になる。
 料金プランの選択肢がなく、消費者も迷うことはなかったのだがこれからは携帯電話の契約と同じようによくわからない状態に突入する。
 よくわからないところで大手電力会社でない事業者を選択しても安定電力供給されるのか?という素朴な疑問を持つ人もいるのでは。しかしそれはない。電力の供給安定性という側面ではどれを選んでも同じである。これは一心同体というか、一蓮托生ということである。地域全体の電力供給システムが安定性が現在より増すかはよく分からないところである。

電力自由化の仕組み
 小売参入全面自由化により、いわゆる、大手10電力の「一般電気事業」や新電力の「特定規模電気事業」といった区別がなくなる。
図に示すように発電事業を行う会社が一つの送電網に電力を供給する。各家庭は希望の会社を選択して電力の供給を受ける。供給される電力系統は一つしかないのでどれを選んでも電力品質は同じとなるわけである。使用した電力の把握ははこれから家庭に順次設置されるスマートメータにより行われる。これは電力会社の持ち物なので今までと同様に無料で設置される。スマートメーターには無線ユニットが付加され、使用している電力が無線でセンターに送られる仕組みを持っている。
スマートメータ
スマートメータには重要な機能がある。
現在の技術では地域全体の電気を蓄積することは出来ないので今、この瞬間に使用している電気は今作り出されたものである。
極端な話、水力発電を例にとると、家で電気ストーブをつけたりして負荷を増やすと発電機は回転するのに必要なエネルギーがより必要になる。このため、発電所では発電機を回すための水の量を増やす必要がある。火力発電等々もしかりである。
これを難しい言葉で言うと
電力は需要と供給の同時同量が必要というそうである。

というわけで発電事業者は自分の利用者が使用する電力量を把握して発電する必要がある。
これを実現するため、スマートメータは30分ごとの積算電力量を制御センターに送る仕組みが備わっている。これを集計して発電事業者は自分の発電量を制御することになる。
でも、これは原理的に少しおかしい。
把握できるのは30分経過した後になるので負荷が急増した場合など、全体の電力量の帳尻が合わなくなり、電力の供給が不安定になってしまう。
電気事業法が新電力会社に義務付けているのが「30分同時同量」ということだ。
一時的に需給バランスが崩れても、30分単位の総量で同時同量を達成すればよいことになっている。
しかし、大手電力には需給を一致させる「同時同量」を義務付けている。
大手電力には需給を一致させる「同時同量」をどのように実現しているのかというと
周波数制御方式という方法で実現している。関東の商用電力は50Hzなので発電機が3000rpm(50x60)で回転していることを意味する。負荷が増えると周波数が低下する方向に動く。この周波数を監視していつも50Hzになるように発電機を制御する。
したがって他の新電力の発電量の不足等が発生すると大手電力がこれを補完するため、発電量を増やして系統全体の需給を一致させる「同時同量」を実現しているというわけである。新電力会社が発電量と電力消費量の差が発生した場合、大手電力会社へ弁償的に支払うのがインバランス(発電量と電力消費量の差)料金というそうだ。

 もう一つの問題は地域で使われる総電力量に対して十分な発電力を確保する必要がある。これを把握するのが予備率と呼ばれるものでピーク電力に対する余裕度を表す。例えば昼間と夜間、夏場と冬場など電力消費が違う。予備率は従来、8−10%ぐらい必要だといわれている。従来ですと1社供給だったので予備率の把握が容易であったが自由化になり、発電事業が登録制になるので系統全体の予備率は把握しずらくなる。改正された電気事業法では小売事業者に対して供給力確保義務づけているが具体的な内容ではないので少々心配が残るところである。

大震災で
2011年に発生した大震災により、電力供給不足に陥り、輪番停電が実施されたことは記憶に新しい。大震災後の電力周波数の乱れを観察したデータがある。観察の方法は家庭用100V、50Hzで動作する昔のデジタル時計(クウオーツではない)の遅れ、進みを一日単位で記録したものである。大震災後、しばらくの間、電力周波数の乱れが観測されていた。デジタル時計の時刻の狂いが10日ぐらい続き、4月に入りやっと安定した。
これは電力会社の電力安定化への努力の跡と考えることができる。この方法は電力の自由化が始まる今後も電力の安定性を簡単に把握できる一つの方法かもしれない。

これから
 2016年4月の電力小売の全面自由化で発電事業、小売電気事業に分かれ登録制になるので発電設備を持たない電力とは直接関係がなかった会社もこのビジネスに参入している。これらの会社は発電業の他の会社から電力を買って商売をすることになる。そのため、いろいろな特典を繰り出し、合わせ技で戦おうとしているから余計わかりづらい。それに携帯電話の世界と同じく、1年縛り、2年縛りに契約事務手数料、解約の違約金など、もう電力比較サイトのお世話にならないと決められない。
 30A未満の契約や電力使用量が4000円ぐらいの家庭ではほとんど安くならないという話であるので一つの判断基準になる。
しばらく様子見かと思ったらテレビで”意気地なし”と言っているCMを見つけた。



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