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コラム西池
   
地震の間 2016/5

 熊本で震度7の地震が襲った。2度目の震度7は強烈で二階建ての家屋の一階部分が無残にもクラッシュ、潰れてしまっている。揺れの体感度合いを表す震度は7段階なので最高の揺れだった。今回の地震では最新の耐震基準で建てられた建物が相当数ダメージを受けており、耐震工事をした避難所も被害を受け、使えなくなっている。

 結局のところ、直下型の地震の場合、耐震性の高い建物でも無傷ではおられず、倒壊はしないものの住めない家屋となる可能性が高い。このことは耐震とは家を守るのではなく、そこに住んでいる人の命を守るということに尽きる。

 日本は地震列島に位置しているため何処でも地震が起こり得る。
江戸時代にも多くの大きな地震があったので色々な工夫の跡がみられる。この時代には大名や武家屋敷には地震の間というものがあったそうである。これは地震に備える特別な部屋であった。地震が発生したときここに逃げ込めれば家屋は倒壊しても命は助かると考えたのである。

江戸時代にあった地震の間は
建物は、全体が土台に固定されず、床組は強固に一体化されており、これらが土台の上に置かれた状態となっている。建物全体が地震時に浮遊状態となって、地震の揺れによって建物は自ら動くが、建物の上部が軽量で重心が低い構造となっているため、容易に倒れないということである。
地震の間の現存するものとして彦根城の下屋敷の地震の間がある。この地震の間は、日常、御茶座敷として使用されていた。 この地震の間の特長は土台と接している床柱下の梁が、「船底型」となっている点でこの船底型の梁が地震の揺れに対し、土台の上で「ローリングをする」という話である。

 現在の耐震化の方法は耐震、制振、免震など、揺れに耐える構造、揺れを吸収する構造、揺れを逃がす構造などが考えられているが江戸時代の地震の間のように
建物が土台に固定されず、建物全体が地震時に浮遊状態となって、地震の揺れを避けるという思想はない。
ひとつだけ、ユニークの発想をもとに考えられた方法がある。それはエアー断震となずけられた方法である。地震が発生すると空気を床下に送り込み、建物を浮かしてしまう方法である。
具体的には震度3程度の地震を検出器で検知すると
地震発生から1秒程で空気タンクに貯蔵してある圧縮空気を人工地盤と基礎の間に送り込み、基礎ごと建物全体を3cm程度浮上させる。これはパスカルの原理を使用すればそれほど大がかりなことではないらしい。地震が収まるとガイドにより元の位置に着地するというものである。
これはもう実用化されており、この方法を使用して建てられた家屋が存在する。多少の不安はあるが地震が発生したとき、家屋は宙に浮いているので地震による揺れがなく損傷が発生しない理想的な方法かもしれない。

しかし、現在の建築基準法にはこのような発想はないので少々難しい。
建築基準法的には土台と基礎はアンカーボルトのようなもので緊結しなければならない(建築基準法施行令42条)とあるので違法となるかもしれない。
これを避けるため
敷地の地面にコンクリートなどで人工地盤を作成その上に基礎、その上に土台を設置する。基礎と土台は基準法通り緊結する。浮くのは人工地盤と基礎の間である。基礎ごと浮上させる。という解釈であるらしい。

現代の地震の間
東日本大震災の教訓を生かして開発された耐震シエルターなるものがある。耐震シェルターは、地震で住宅が倒壊しても寝室や睡眠スペースを守ってくれるもので既存の住宅内に設置する。おもな種類には一部屋型とベッド型がある。
寝室等、部屋の中を鉄骨やパネルを使い補強し、安全な空間を確保するものやベッドの上部を金属製のフレームなどで覆うことで、寝ている人を保護するものが商品化されている。
これらは東京都の耐震ポータルサイトにも色々紹介されている。
また、滋賀県などでは個人木造住宅への耐震シェルタ−等の普及事業として助成金が出ているようである。

いくら耐震化を施しても大きな地震で倒壊しないという保証はない。一部の部屋を地震に強固にし、いざという時に命を守る。という地震の間の考えは理に適っている。
昔の木造の家のトイレは4本柱があり、地震の時逃げ込むと安全だと言われていたのを思い出した。
取り敢えず、一番安全そうな部屋を日頃から決めておき、その部屋に逃げ込む事が最善の策かもしれない。




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